機関投資や企業系の投機手段としては、10年ほど前からAIにサポートさせる投資方法が始まっていました。
そして最近では個人投資家が、ロボアドバイザーと呼ばれるAI投資法を利用し始めています。
投資に関して全く知識や経験のない人でも気軽に参加できるAI投資ですから、バブル崩壊後に投資の世界から離れていった方はもちろん・・・。
20代・30代の若い個人投資者も新たに参入するようになり、歴史的な投資ブームの予感を感じさせています。
今回は、AI投資がシェアを広げる中で、投資家はどんな基準で投資判断をすべきかについて紹介します。
急増しているAI投資の現状と国内外の事例について
まずは国内外で大規模な資金調達に成功しているAI投資の事例について詳しく見ていきたいと思います。
アメリカにおけるAI投資の現状はどうなってる?
近年の世界的な投資ブームの要因として、一つにはAI技術を駆使したロボアドバイザーが手軽に利用できるようになったことが挙げられています。
国内の投資アナリストとして権威のある野村資本市場研究所の調査では、アメリカでは30代を中心にAI投資が利用されているとのこと。
かつては高齢者の個人投資家が多かったが、2015年度の統計では投資家の90%以上が50歳未満に変化しているとも述べています。
また米投資分析会社セルーリ・アソシエイツによると、2016年度のアメリカ国内のAI投資による資産運用残高がおよそ830億ドルだったと言います。
これまでの増加率や現状を分析すれば、2021年には5倍近くの3850億ドルに及ぶのではないかと予想しています。
また、グローバル・マネジメント会社のA.T. Kearneyの統計では、2020年に2兆ドルをオーバーするとも分析していて、セルーリ・アソシエイツの予想以上に普及速度が速いと見ています。
ちなみに2兆ドル規模になれば、それはアメリカの資産運用残高の5.6%を占める比率で、各投資市場に与える影響力は無視できないレベルになるだろうと推測されています。
アメリカでは積立投資でのロボアド利用者が多い
野村総合研究所での調査では、アメリカの30~40代がAI投資の中心層で、特に中長期の積立投資を行っているとあります。まさにAI投資の王道を行っている感じです。
人気の理由は、少額の投資資金でも参加できる事、手数料が低く、オンライン上であればどこからでもネット完結の取引ができる点が挙げられています。
もちろん操作方法も非常に簡単で、誰にでも理解しやすいシステムが提供されているのも大きなポイントでしょう。そのため利用者の13%が投資未経験者だそうです。
日本のAI投資の現状について
では、日本国内のAI投資の現状はどうなっているでしょうか?
2018年3月に報じられた日本経済新聞電子版によりますと、ウェルスナビ・お金のデザイン・マネックス・楽天証券といった国内の大手4社の利用残高が2018年2月末までで1220億円を超えたとあります。
国内でも若い世代を中止にAI投資者が急増中で、直近の1年間で4倍以上も伸びてきているとのこと。
まだまだ序盤戦ということで、今後の伸び率はアメリカ以上になるだろうとの見方が専らです。
日本のAI投資はとにかく20~30代の利用が中心
AIによる投資を行っているのは、20代・30代の方が全体の49%となっていて、その81%が投資未経験者とあります。
つまり初心者がいきなりAI投資に参入しているのが現状です。
これを受けて、各金融機関でも新規参入の意欲を見せていて、「お金のデザイン」などは、東海東京FHDに50億円もの増資を行い、系列の証券会社や地銀などの顧客にAI投資を売り込むといった営業を展開しています。
また同証券会社は、SBI証券と住信SBIネット銀行とも提携し、それぞれの顧客やネットワークの連携を図ってもいます。
このように、今後加速度的にAI投資の利用者が急増していくことは間違いないようです。
AI以外のどこに人間は投資判断を持つべきか?
AI技術は2045年あたりにシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えるとされていて、つまりは人間の頭脳を超えてしまうのではないかとの見解が専門家から出されています。
これが本当かどうかはともかくとして、単に投資行為だけに限った能力では、すでに人の能力を十分に凌駕した部分が認められています。
例えば株式投資を例にとって考えてみますと、基本的にプロの投資家といわれる方々は、必ず複数の時間軸のローソク足チャートを併せ読むのがセオリーです。
それに被せてパラボリックやボリンジャ―バンド、RSIなどのオシレーター(テクニカル指標)を連動させ、相場のトレンドを判断し、その後の展開を予想して売買を進めます。
エントリータイミングも利益確定売りや損切りの売りも、9割方はチャートからの情報を集約して行っているという訳です。
もちろん最終決断を下すのは、勘であったり経験則であったり、個人の投資家資質が問われます。ですが、この個人の判断が得てして失敗の原因になるのです。
そこで感情に流されない、あくまでも客観的なトレードが遂行できるAI投資の方が、数段成功率が高くなります。
ただし、投資家が自己判断をする部分はちゃんとあるんです。
投資家個人が判断をしなければいけないポイント
AIは学習するコンピュータですので、開発エンジニアが手間ひまかけて教育を施さなければ使いものになりません。
具体的にはどのデータを与え、どう処理させるか、あらかじめ設計者の裁量に掛かっています。
このベーシックな基礎思考回路が不完全ですと、いくらAIと言えども役には立たないでしょう。
もちろん失敗から学ぶディープラーニング機能がありますから、やがては成功率を高めていくかもしれません。ですが、できの悪い状態で利用するのは実に損でしょう。
そうです。どのAIを選ぶかがポイントになります。
これは直近の実績データを比較検討することでクリアできます。
運用利回りが高く、あまりブレの無いAIシステムを選びましょう。
またフルオートではなく、アドバイス機能だけを利用することもあります。
つまり、その度の資産運用金額とエントリータイミング、そして利益確定売り・損切り売りの決断を投資家が最終判断して決済する投資方法です。
もし直感でAIが間違っていると判断した時、どのように判断して行動するかは投資家の力量となります。
フルオートでAI投資をする場合でも、途中経過をちゃんとチェックして、利回りが悪いとか自分のスタイルとは違うと感じたら、ポジション調整を入れていくという判断も必要です。
特にポートフォリオが良くないと感じたら、具体的に変更内容を指示していく必要があり、まるっきりAI任せで成功できるとは限りません。
AI投資に個人投資家は勝てるのか?
先にも述べたように、AIのシンギュラリティを迎えたならば、もはや人よりもAI投資の方が勝率も利回り効率も高くなることでしょう。
ですが投資の世界は、市場に投入された資金の取り合いが真の姿です。
誰かが200万円で売却したビットコインは、誰かが200万円で購入したことで成立しています。
相場が下落せずにキレイに上がり続けるのであれば、参加者全員が利益を得ることも可能でしょう。
でも実際は、大きく上下して価格は推移していくものです。
ですから、いくらAIの優れた頭脳でも、頻繁に逆の値動きで損を出すのが道理です。
またAI同士の読み合戦も生じますから、誰かが勝てば誰かが損するという状況も残っていくでしょう。
勝率が70%とか80%になる事態はあまり考えられません。
そのようなジレンマの中で、やはり投資家個人が判断して決断を下す必要が出てくるのは間違いないでしょう。